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松づくし (歌詞)

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6月4日に開催いたしました『芸妓さん舞妓さんと京会席
こちらで披露された舞踊の歌詞です。

 

〽うたい囃せや大黒
一本目には池の松
二本目には庭の松
三本目には下り松
四本目には志賀の松
五本目には五葉の松
六ツ昔の高砂や
尾上の松や曽根の松
七本目には姫小松
八本目には浜の松
九ツ小松を植え並べ
十で豊久能伊勢の松 

日を松 時松 暮を松
連理の松の契りを込めて 
福大黒を見さいな

 

※本来は

『十で豊久能伊勢の松』

こちらの後に

『この松は芙蓉の松にて
情有馬の松が枝に
口説けばなびく相生の松
又いついつの約束を』

とあるのですが、通常お座敷では長すぎるため省略されます。
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日本の名所や身近に見る松をおめでたい数え唄にした歌詞です。
冒頭の写真でもわかるように、この曲用に扇子には裏、表共に松が描かれていて、
背景も金と銀に分かれています。
ことさら縁起物の時に踊ることが多いそうです。

現代語訳にすると

唄い囃せよ、大黒の舞。
一本目には池の松。
二本目には庭の松。
三本目には枝の垂れた松。
四本目には志賀の唐崎の松。
五本目には五葉の松。
六本目、昔から有名なのは高砂の、
尾上の松や曽根の松。
七本目には姫小松。
八本目には浜の松。
九つ小松を植え並べ、
十で豊久野の伊勢神宮の松。
この松は人情を解する松で、
恋心を訴えれば、それに応える夫婦の松。
それに、又、いついつ逢おうという約束のために、
逢う日を待つ、逢う時を待つ、逢う夕暮れを待つ。
いつまでも仲睦まじくという男女の契りを込めて、目出度いことよ大黒の踊りは。


では単語別に解説すると…

大黒・・・昔から正月に行われている辻芸能のことです。
黒頭巾をかぶって大黒さんのような扮装で木づちでもって家々を回るそうです。

五葉の松・・・通常は2本づつ針葉がでてくるものですが、こちらは5本まとまって出てきます。
庭木や盆栽に多様する品種です。

高砂・・・兵庫県高砂市の高砂神社。
この後に出てくる相生の松は高砂神社の境内にあります。
黒松と赤松が基部で合わさっていて男女仲睦まじい象徴です。
ちなみに現在の相生の松は5代目です。

尾上・・・兵庫県加古川の尾上神社。
こちらも高砂と同じく境内に相生の松があります。
ちなみに現在の相生の松は8代目だそうです。

曽根・・・兵庫県高砂市の曽根天満宮。
菅原道真が無実の罪で九州大宰府に配流された時に日傘山に登って、現在の曽根天満宮の地で休んだ時、
「我に罪なくば栄よ」
と小松を手植えしたという言い伝えがあります。
そのあと播磨に配流となった四男敦茂が父の形見の曽根の松の傍らに父を祀り、曽根天満宮となりました。
つまり曽根の松のあとに曽根天満宮ができたことになります。

姫小松・・・相生の松の黒松、赤松のうちの赤松の方で女松。
黒松は男松になります。

浜の松・・・大阪府泉北群高石町一帯にあった浜。
浜の松は太正天皇の歌に出てくるのが有名です。
大伴の高師の浜の松が根を枕き寝れど家し偲はゆ

豊久野(とよくの)の伊勢の松・・・三重県津市安濃町内田にあります。
伊勢音頭に
伊勢のナア豊久野 銭掛け松は 今は枯れてもヤンレ 名は残るヤートコイセーノヨイヤナ アララ コレ ハイセコノヨイトコイセー
という有名な歌詞があります。
銭掛け松とは、伊勢神宮参拝の旅行客が銭に紐を通して松にかけたそうです。
いまでも石碑が残っています。

有馬・・・温泉で有名な兵庫県神戸市北区有馬町のことです。
こちらの温泉には藤原道長や定家が入っています。

連理の松・・・島根県益田市高津の琴平神社境内に生育していた黒松の巨木。
長く伸びた一本の枝が別に生えた黒松に癒着し、二株が完全な連理の状態を示している松で昔から夫婦松と呼ばれています。

ちなみに店主はこの曲が好きで、以前披露宴でも踊っていただきました。